言わずと知れた神保町の名店・小宮山書店。 6フロアからなる店内は、まさに古本のデパート。 フロアごとに個性が表れている。
「当たり前のことを当たり前
にやる」が重要なんだ。
テツヲ 今月から始まったアドリブックスの『魁!就職活動』、もう学ラン着なくていいし、要は番長のおごりで古本屋さんと楽しくお食事すれば良いんですね! わーい!
ユキヲ バカモノ! 卒業したからって浮かれるな! これからがいわば実践編だ。しっかり先輩をおだてて、調子に乗せて、普段は聞けないような話を聞き出すんだ。わかったな!
テツヲ ……でも、学ラン脱ぐとちょっとさびしいですよね。
ユキヲ ……うん。たまには着ような。
テツヲ さて、記念すべき第1回の先輩は、小宮山慶太(小宮山書店)さんです。
ユキヲ 先日の「アメ○ーーク!」でピース・又吉さんが店名を挙げずに紹介したにも関わらず、ツイッターなどで反響が大きかったですね。魅力ある店だからだと思うんですが、普段はどんな心構えでお店づくりをされているんですか?
小宮山 「若い人の入口」っていうのが一つの大きなテーマだね。本格的に店に関わるようになったのは15年ぐらい前で、品揃えは豊富だけど専門店には及ばないっていう感じだった……。何から始めようか考えたとき、神保町全体を見ても若い人を大切にするお店が少ないと思って、だったら自分が入口になれば良いな、と。街としても、そして会社としても新しいお客さんと一緒に育っていかないとダメだから。
テツヲ 具体的にはどんなことをしましたか?
小宮山 わかりやすいところでは、店の年中無休化。日曜にしか来られない人も当然いるから。日曜日に開いている古本屋は、神保町では当時ほとんどなかったよ。普通、本屋って日曜日は開いているでしょ。それと、車庫を一時的にお買い得本で埋め尽くした「ガレージセール」。最初はこんなに大きな目玉になるとは思わなかったけど、おかげさまで賑わってきたよ。
一番大切な棚作りの面では……仮に三島由紀夫という作家を考えたとき、限定本や草稿では勝てないけど、そこからこぼれ落ちるものが沢山ある。例えば原作映画や演劇のポスターなんかよく売れるけど、綺麗にパッケージして"見せる形"にした店はなかった。そういうのを専門でやっている店は別だけど、三島だったらこっちのほうが強いから、コレクターのかゆいところに手が届くようなアプローチができるようになって。同時に作家と深い関係のある人や、同時代に別ジャンルで活躍した人を追いかけていった。作家が「点」だとしたらそれを繋いで「円」にするっていう作戦。いずれにしても、本屋として当たり前のことを当たり前にやる、ってことを心がけているよ。
ユキヲ 普通は点をつないで「線」っていうけど、小宮山さんは「円」なんだ!
仕事のこと、本のこと、神保町のことを話しだしたら止まらない。 クールな風貌とは裏腹に、熱〜いメッセージをアドリブックスに伝達中!
古本の多様性を活かしての
「空間づくり」の意識は欠かせない
小宮山 高校・大学と商業デザインを学んでいたので、図面を引いて制作するところまで全部自分一人でやるわけ。その経験が今の「円」っていう考えの根幹になっていて、「この人とこの人をつないだら面白いんじゃないか」と思って企画を練ったりする。もちろんそれがいつも形になるわけじゃないけどさ。
テツヲ 古本屋として一番大切だと思うものはなんですか?
小宮山 「感性」に尽きるんじゃないかな。自分が好きじゃないものは勧められないでしょ。背中押してもらいたくてお客さんは色々と聞いてくるわけで。知識や経験は身につくけど感性だけは自分で努力しないと錆びついてしまうから、色々な場所に出かけて、食、酒、服、映画、アートを常に感じる。そうして培ったものを店づくりにフィートバックしていく。もちろん共感ばかりは得られないけど、はまってくれる人も絶対にいる。でしゃばるわけじゃないけど、そういうテリトリーがあっても良いと思うんだ。それを創るのが古本屋の仕事なんだし。
ユキヲ では、ここで<小宮山慶太流・書棚の哲学>をお願いします!
テツヲ なに? そのカン○リア宮殿っぽいの!
小宮山 絵や写真もあるからあんまり「書棚」っていう感覚はないけど、見やすいレイアウトや興味をそそるような構成を心掛けるのは当然だよね。以前は1階が文学だったのを全部写真集にしちゃったんだけど、やっぱりお客さんにとって刺激的じゃないと。それから年末に1度だけガラっと変える、うちでは「一夜城計画」なんて呼んでるけど、年始に来たお客さんが「全然わからない」とか「見にくい」とか言っているのも、じつは嬉しかったりする(笑)。
新刊書店では当たり前の、目線を越えない高さで本棚を展開(古本屋の多くは天井まで本を積み上げるスタイル)。 天井までの高い空間を利用し、ポスターなどを配置して、お客さんに楽しんでもらっている。
テツヲ お客さんのクレームも嬉しいって言えちゃうなんて、すごいなあ。
小宮山 もちろん売れなければどんどん動かす。普通の小売りであればそれは当たり前のことで、常に新鮮な空間にしたい。古本の持っている多様性を活かして、「空間」というものを必ず意識する。4階のギャラリーも最近はアクが強いものばかりになっちゃって、飽きられないようにどんどん下に降ろしてるから、店全体がぐちゃぐちゃになってるんだけど(笑)。
テツヲ 番長もギャラリーにずっと飾ってもらったらどうですか?
ユキヲ アメ○ーーク!に出られるなら考えちゃう!
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