初心に返るために学ランを着る2人。そして、前作「古本高校」の記念すべき第1回取材場所のコミガレ前で、久しぶりの記念撮影!
「若」「女」の掘り起こしに、
学ランが一役買った!?
テツヲ あれっきり音信不通になったと思ったら、いきなり呼び出し! 本当に番長は自分勝手だよな。だから結婚できないんだよ。だから結婚できないんだよ。
ユキヲ よお、テツヲ。久しぶりだな。「結婚できない」は余計だ。しかも、なんで2回言う!?
テツヲ 久しぶりだな、じゃないですよ。ったと思ったら、いきなり呼び出し! 本当に番長は自分勝手だよな。今年もジャイアンツは絶好調ですよ! でも、ヨシノブが怪我して僕はどうすればいいのか……。
ユキヲ ………………………………。
テツヲ ………………………………。
ユキヲ ……ふつうにやろうか。
テツヲ そうですね……。はい、というわけで、『魁!就職活動』はいよいよ最終回になりました。最後はやっぱりこの人ということで、日本書房の西秋ユキヲさんにお話を聞きたいと思います。
で、これはどうしても最初に断っておきたいのですが、たまに「テツヲくん、ユキちゃんに変なことやらされて大変だね」なんて言われますが、そもそもこのad-libooksは、僕がユキヲさんをお誘いして始まったんですよね。
ちょうどイケブラ(※神田古書店のイケメンブラザースの略)特集が終わる頃で、もったいないなって……。あんなことできる人、やってしまえる人は、古書業界でもユキヲさんしかいないじゃないですか。
ユキヲ たまに「何やってんだろう★◎▼×♀♂」って冷静になることもあるけどな(笑)。ただ「古本の楽しみ方」を提案したいと常々思っていて、老若男女の「老」「男」相手はほかの方々がちゃんとやっているから、俺は「若」「女」をターゲットにしたいっていうのがテーマとしてあったんだね。
神保町でそれをやっても、お店の数字に結びつけるのが難しいことは、ある程度わかっているんだけど、「入り口くらいは作らなきゃ」っていう使命感みたいなものがね。
テツヲ ユキヲさんとしては、やっぱり神保町が第一ですか?
ユキヲ そりゃ神保町を一番にしないと辻褄が合わないでしょ。だけど正直言って、「一箱古本市」とか「女子の古本屋」とか、そういう新しい動きに対する嫉妬があるの。岡崎武志さんとか南陀楼綾繁さんとか、古本の新しい楽しみ方を見事に提示していて、本当にすごいよ。
スタンダードが通用しなくなった時代に、既存の古本屋の棚に並んでいなかった本でカルチャーを作ったっていうか。オレの中で「神保町に人を呼ぶ」っていうのが最大のポイントなんだけど、かなり持っていかれたなぁっていう意識があるわけ。
テツヲ だからこれは神保町に限らないことだけど、ユキヲさんみたいな露出の仕方をする古本屋さんがもっと増えたほうが面白いと思うんですよ。キャッチーなコンテンツを作るなんていうと大げさだけど、でも「わかりやすい・親しみやすい試み」をするのはどの業界でも当たり前にやってることで、別にユキヲさんが奇抜なわけじゃない。まあ学ランはなかなか着ないだろうけど(笑)。
ユキヲ そう言ってもらえるのが一番うれしいよ。『神保町公式ガイド』で著名人が本を紹介するページを設けたりしたけど、食いつきやすいじゃない。でもそんなの新しいことではないし、もちろん古本屋や神保町を軽んじているわけでもない。あくまで「若」「女」の入り口を作るための方法であって。
読書家ではない古本屋、ユキヲの書棚を初公開! 天井まで本棚にして参考資料類をぎっしりと埋める。
本好きはそもそもマイノリティ。
だけど目標はビブリア古書堂!
テツヲ あとユキヲさんはよく「本好きはそもそもマイノリティだ」って言うじゃないですか。こんなこと言ったら失礼かもしれないけど、そう思ってない古本屋さんは結構いるんじゃないか、と。
ユキヲ そこを前提にしていない人が本当に不思議だよ。それで「客が来ない」「本が売れない」「若い人を呼ぶためにネットで宣伝しなきゃ」とかね。違うよ! 既存の店舗や即売展がどれだけ広報しても、ほとんど効果はないと思う。本好きはマイノリティなんだからさ。
本当に本で売り上げを伸ばしたいのなら、大事なのはマーケティング。この時代に人を呼びたいなら、ブックディレクターの幅 允孝さんのところで修行するくらいの覚悟がないとダメだね。ただオレは入り口を作るっていう作業は、最初から「日本書房」の仕事とは完全に切り離してやってるの。ウチは国文学の学術書の専門書店だから、同じようにやることは難しいと思っている。
テツヲ 「古本屋はこういうもんだ」っていう思想があるじゃないですか。なんというか伝統的な慣習とか。で、古本屋さんだけじゃなく、その周辺を盛り上げてる人たちの中にも、「古本屋はこうでなくちゃ!」と思いこんでいるふしがある。
それが良いかどうかは別にして、ユキヲさんは固定概念にとらわれていないと思うんです。前の連載「古本高校」のネタなどは、そういう思想と無関係なところで作られてるじゃないですか。しかも古本屋さん自身でやってる!
ユキヲ 既存の書店とか、俺らみたいな二世・三世が当然そうなるのはわかる。でもそうじゃないスタートをしてる人が、「古本屋はこうでなくちゃ!」と言うのは不思議だと感じることはあるね。経営が良ければ、ポリシーはどうでも良いとは思うけど。
古本屋のイメージっていう話でいえば、この間、知り合いの女の子に「古本屋さんはものすごい沢山の本を読んでるんでしょ」って言われたから、「読書家なんてそう多くないよ」って教えたら、すごいびっくりしたのね。
自分の専門分野についてはめちゃくちゃ詳しかったりするけど、それは本の価値や歴史を知っているということであって、読書っていう感覚ではない。古本屋にとっての本は、基本的に「読みたい」じゃなくて「扱いたい」だからね。
とにかくさ、俺なりにあれこれ考えて、古本屋・古本に親しみや興味をもってもらうためにいろいろ試したつもりなんだけど。でもね、『ビブリア古書堂』が出てきて、あれだけ売れて、しかも月9でドラマ化までされて、俺の役目は終わったと思ったよ。
最後の取材も2人で仲良く、食べて飲んで話して、お決まりの2ショット! 美味しゅうございました!
テツヲ ええーーーーーーーー!
うそーーーーーーーーーーー!
ユキヲ だって、ビブリアを通じて別の本を読みたくなったりするわけじゃん。潜在需要を呼び起こすっていうのはとんでもないことだよ。俺のまわりの女の子たちも「『たんぽぽ娘』、読んでみたーい」とか言ってるし。
恥ずかしいけど、俺はまさにそういうことをやりたかった。世間へのでっかいアクションをね。「正解はラノベ(ライトノベル)だったのか!」って煩悶する夜を過ごしたよ。「いっそ和本をテーマにしたラノベを書くか!」とか思ったりさ。
テツヲ 僕はそのあたりについてはまったく逆の考えですわ。ここでは言わないけどさ。
ユキヲ まあ、ドラマ化の下地を作ったのは俺かな、って思うことにしてるけど(笑)
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