![神保町に来れば本物に会える!!](img/museum/title_museum.jpg)
![辻静雄の著書](img/museum/vol15_img_main.jpg)
![Vol.14悠久堂書店『たのしい料理本の世界』](img/museum/vol15_title_main.jpg)
![この不況の時代に必要な知恵](img/museum/vol15_subtitle_main.jpg)
和食、中華、イタリアン、フレンチ…。いまや日本は世界各国の料理が楽しめる食大国。街中には各国の料理を提供するレストランが建ち並び、家庭の食卓でもさまざまな国籍の料理を楽しむことができる。
本来は高級店でしか食べることのできなかったフレンチや本格的な素材なしでは作ることのできなかった中華が、各家庭の食卓に並ぶようになるのに、一役担ったのは実は「本」だ。とくに、辻静雄の存在は、「料理の普及」かつ「料理本の普及」において、欠かすことができない。悠久堂書店の書棚に並ぶ辻静雄の著書を手に取り眺めていると、現代の私達がフレンチを食べられる有り難みに、思わず御礼を言いたくなる…?!
![](img/museum/vol15_title_text.gif)
![悠久堂書店 諏訪雅也さん](img/museum/vol15_img_staff.jpg)
悠久堂書店 諏訪雅也さん
現在、実に数多くの料理本が発行されており、私達は気軽に著名料理人のレシピや、各国料理のレシピを知ることができる。悠久堂書店の四代目・諏訪雅也さんに聞くと、そもそも「料理本」というものが発行されるようになったのは1960年代あたりから、なのだそうだ。
「それ以前は、婦人雑誌の付録として、レシピが掲載されることがありましたが、本格的な料理本というのはありませんでした。辻料理専門学校でも有名な辻静雄さんの著書が1960年代に発行された以降、大きく変わっていきました。彼がいなかったら、日本の料理事情は違っていたでしょう」
辻静雄は、「西洋料理」という概念しかなかった時代にフランス料理を世に広めたフレンチの第一人者であり、日本で始めて料理学校を創設した料理界の先駆者でもある。当時は今のように世界各国のスパイスが簡単に手に入る環境ではなかったため、"それっぽく作る"ためのアイディアと工夫が、ふんだんに盛り込まれていた。当初は料理を本職とする者達の教科書として読まれていたが、一般家庭向けのものも書かれるようになり、次第に、日本に「フレンチ」という料理が普及していった。先述の「もし辻静雄という存在がなければ、私たちの食生活は大きく違っていた」というのは、決して過言ではないのだ。
辻静雄の著書をきっかけに、世界各国の料理本も次々と発行されるようになり、日本人の食卓は豊かになっていった。悠久堂書店の書棚の前に立てば、自然とお腹が空いてしまうほど、多ジャンルの料理本が色鮮やかに並んでいる。思わず「やはり店主は、食通なのですか?」とお聞きすると、「大好きです!」とのお答え。三代目の雅夫さんも、四代目雅也さんも、神保町住民達が「とにかく食通」「ワインなら諏訪さんに聞く」と口を揃えるほどのグルメ一家。
「料理本を扱うのは、もちろん自分たちが好きだから、ということもありますが、生活に関わりのある本を集めたいという思いですね。特に料理については、プロの方から、趣味の若い方まで、幅広い方々が喜んで買っていってくれます。女性が多いことも特徴なので、初めての方でも入っていただきやすいお店だと思いますよ」
料理本の書棚の向こうは、美術展のカタログが数多く並び、二階では山関連の本を扱っている。
「どの分野も、こだわりを持って集めているので、お客様と同じ価値観を共有できることがとても嬉しいです」
ちなみに、雅也さんの新たな趣味は自転車だというから、次に悠久堂の棚に並ぶのは自転車本かもしれない。店主の思いが書棚に反映され、同じ趣味を持った人が集う。古書店とは、なんと幸せな場所であることか。
(取材・文/ナビブライター坂口絵里子、ナビブラ神保町編集部)
▲『美術展のカタログ』
悠久堂が料理と並んで力をいれているのが美術展カタログの類。画集に比べて
廉価で収納スペースをとらないため、気軽に手にしやすい。「日本は80年から90年にかけて美術館がたくさん作られました。だからカタログ発行数も多く、印刷もきれいなので見応えは十分。画集を探せないような、レアな作家のものが人気がありますね」。
![『女性誌の付録にレシピブックが登場』](img/museum/vol15_img_text1.jpg)
▲『女性誌の付録にレシピブックが登場』
写真左は昭和10年1月号、写真右は昭和30年12月号の
『主婦の友』の付録。家庭で作れるレシピがイラスト付で
ていねいに記されている
![『パスタ宝典』](img/museum/vol15_img_text2.jpg)
▲『パスタ宝典』
1983年に発行された
ヴィンチェンツォ・ブオナッ
シージの「パスタ宝典 1001の
調理法」(写真右)。
89年版は1300種(写真中央)、
98年版1347種(写真左)と
少しずつ増えている。
![『イタリアソース宝典』](img/museum/vol15_img_text3.jpg)
▲『イタリアソース宝典』
上の『パスタ宝典』から二年後に
発行された『ソース宝典』は
ソース253種とその応用料理がずらり。
![『中華料理』](img/museum/vol15_img_text4.jpg)
▲『中華料理』
1966年発行『中国料理専門知識』(写真右)、
1971年発行『中国料理百科理論と名菜譜抜萃600選』(写真左)。
ともに陳健民が監修しており、料理人達が中華料理の教科書と
して読んでいる本である。
![『天井までずらりと並ぶ料理本』](img/museum/vol15_img_text5.jpg)
▲『天井までずらりと並ぶ料理本』
和、中華、フレンチ、お菓子…ありとあらゆるジャンルの料理本が
天井までうずたかくつまれている店内。比較的新しい文庫本も
多数あり。
靖国通りのほぼど真ん中、当連載の「Vol.13」で登場した金子書店さんのお隣さんです。三代目の諏訪雅夫さんは、東京はもちろんのこと、外国の三つ星レストランも食べ歩く食通としても名高いお方。
店舗オフィシャルサイト
![悠久堂書店概観](img/museum/vol15_img_shop.jpg)
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