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    2012〜15年掲載

ピエール大場の官能小説「路地裏のよろめき」

ピエール大場著者プロフィール
神保町にある某会社の開発本部部長。長野県出身。かつて「神保町の種馬」と異名をとったほどのドン・ファン。女性を誘うときの最初の言葉は、「美味しいもの食べにいきましょう!デザート付きで」
『NISSAN あ、安部礼司』HP

第七十七話『イルカのメロンは、ぷにゅぷにゅ話す』

「ハワイでイルカと一緒に泳ぐのが、夢だったんです」

オーガニックやエシカルな商品を取りそろえる
セレクトショップ『LAULE’A(ラウレア)』の上田友理恵は、言った。

神田小川町にある『LAULE’A(ラウレア)』は、
2021年5月5日、リニューアルオープンしたお店。
LAULE’A(ラウレア)とは、ハワイの言葉で「幸せ」という意味。
からだにも、地球にも「幸せ」な優しい商品が並ぶ。
シンプルなサステナブルライフをもっと身近にというコンセプトが
店先から伝わってくる。

リップスティックやハンドクリーム、
バスパウダーにホワイトニング・トゥースペースト。
日常の生活から、オーガニックに包まれる暮らしが、
具現化される。
そして、可愛い手作りのジュエリーもある。

友理恵と顔見知りになった涼川小夜子は、
よく顔を出すようになった。
今日も、まずはオレゴンで収穫された栄養価の高いスーパーフードの
ストロベリーがベースになったCBDグミを購入。

友理恵のアクティブな生き方が好きだった。
ちなみに、友理恵は、元看護師。
ハワイ好きのオーナーと知り合い、
店をまかされるようになった。
「写真集を見たんです、ハワイの……すっかり魅了されて。
特にイルカの泳ぐ姿が綺麗で……」

イルカと聴いて、小夜子は、下腹部に痺れを感じた。
以前つきあっていた大学教授の砂田は情事のあと、必ず、
小夜子の胸を撫でながら「イルカのメロンが話してる」と
言った。
「イルカの頭には、メロン体という特殊な脂肪がつまった
器官があってね、音を反響させたり放射したりして、
なんだかね……ふふふ、面白いんだ、イルカがね、
しゃべってるみたいなんだ」
思い出し笑いをする砂田の顔は、動物好きの少年の
ようだった。
小夜子の胸に耳をあてる。
まるでぷにゅぷにゅと、音が響いているイルカのように。
そのあと、二度目の交わりが始まる。
今度は、一度目より、深く、潜る。
小夜子は、体中で振動し、悦楽という音を奏でる。
「わたしの中のメロンが話をする」
砂田が、小夜子がいったあと、満足したように、
自らの動きを始める……。

「ALOHA(アロハ)には、30以上の意味があるって
聞いたことがある」
小夜子が言うと、友理恵は、笑顔で答える。
「そうなんですよ。愛する、思いやり、慈悲、寛容、哀れみ、
情け、慈善、敬意、親切、寛大、そうそう、私が好きな意味は、
『こんにちは』だけじゃなく、『さようなら』もあって、哀しみを
内在しているということ」

男女の交わりにも、たくさんの声に出さない言葉がある。
とても気持ちがいいとき、なぜか、涙が出る。
あの涙は、どこか、哀しみにも通じる。
「アロハ」
小夜子は、そっとつぶやく。
お店の前の通りに、さっと風が吹いた。
哀しみを含んだ、秋の香りがした。

LAULE’A(ラウレア)

LAULE’A(ラウレア)

住 所
神田小川町3-11-9 E/Front1F
URL
お店のHP

LAULE’A(ラウレア)

こんなに気持ちのいいお店はない。
店内にいるだけで、空気が変わる。
SDGsというと、
どこか構えてしまうひとも、
ここにくれば、身近に実践できるもとが
所狭しと並んでいるから、大丈夫!
友理恵さんの美しく素敵な笑顔に
会えただけでも、心が「幸せ」になる!