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    2012〜15年掲載

7月のお悩み

 子どもの頃から髪が強い癖っ毛で、男の子みたいに短くカットしていました。そのせいか、高校に進学しても周りの女の子たちみたいにお洒落に興味が持てず、いつも1人で本を読んで過ごすばかり。性格が暗いわけではないと思うのですが…。そろそろ20代を終えようとしているわたしですが、いいかげん変わりたいんです!  大学へ進学した際にストレートパーマをかけ、髪は多少マシになりましたが、なにしろファッションセンスがないので、変わるといっても、何を着ればいいのかわかりません。わたしはどうすればいいのでしょうか。

(いろいろ焦るアラサーちゃん/女性)


『裸族 ベネズエラ現住裸族を追って』
 橋本貞夫

(1979年/大陸書房)

本当にあなたを
輝かせるものを見つけよう

  お洒落に興味がない! それは苦労したでしょうなー。いや、いままでは苦労してないのか。ただ、いまになってその必要性に気がついて、焦ってるというわけね。まあ、たしかに世間一般では女性はお洒落をするもの、着飾るもの、ってことになってるけど、そんなの誰が決めたのやら。

  お洒落というのは、誰かのためにするものではなくて、自分のためにするものですよ。自分が着飾りたいと思ったのなら、そうすればいい。パッと見て、自分が気に入ったものを身に付けていけば、自然とセンスがよくなっていくもの。お洒落が好きな人は、学生時代からずーっとそうやって、ときには失敗もしたりしながら、センスを磨いてきたんだよね。
  逆に、あなたがこれまでお洒落に興味を持てないで生きてきたということは、そっち方面にはあなたの才能はないのだから(断言)、無理してお洒落しようなんて思わなくていいんじゃないかな。指差して笑われたりしてなければ、いままで通りで十分ですよ。世間が煽っているほど、男の人は女性のファッションについて気にしてない。

  だいたいねえ、ファッションが流行でコロコロ変わるようになったのなんて、14世紀中頃からのもんで、それまでは、みんなずーっと同じようなカッコしてたんだから。もっと遡れば、みんな裸だったじゃないか! 脱げ、脱げ!
『裸族 ベネズエラ現住裸族を追って』という本の中に、こんなことが書かれている。

  グワイカ族は、ベネズエラの裸族の中で、もっとも未開種族のなかまである。
  グワイカ族自身、空気と太陽を自分たちは着ているとも思っている。生まれながらのそのままの裸を全く意識していない。裸の生活が、密林の生活には適応するのかもしれない。

(P128より)

  空気と太陽を着ている…! いやあ、これは素敵な考え方だなー。

  こうした密林の裸族のところにも、キリスト教の伝道とともに文明の光が与えられようとしている。そのときに、大量の衣服も一緒に持ち込まれるわけだけど、彼らはすぐに脱ぎ捨ててしまうんだそうな。伝道師の皆さんにとってそれが悩みのタネだという。でもまあ、裸族からすれば余計なお世話だよね。
  さすがに日本では全裸になって外へ出たら捕まる。だから裸になることはないけど、流行のファッションなんてものを無理に意識する必要はないよ。あなたを輝かせるものは、ファッションとは別のところに、きっとあるはず。

人は何かの特技があれば
いくらでも輝ける

  相談者さんをお洒落から遠ざけてしまうことになった最初の原因は、髪の毛だそうだね。こうした身体的な特徴というのは、なかなか難しいものがある。ファッションと同じで、身体の特徴なんて、本人が思うほど周囲の人は気にしないものだけど、でも、本人にとってはやっぱり深刻な悩みだったりするからだ。それを克服するのは容易じゃない。





『Footballers' HAIRCUTS』
 CrisFreddi

(2003年/Wellington & Nicolson)



  とりあえず、ダメで元々ということで、こんな本を読んでみてはどうだろう。ヘンな髪型をしたサッカー選手たちの写真を集めた『Footballers' HAIRCUTS』だ。テキストを引用しても意味がないので、かわりに写真をいくつかご紹介する。


目次からして、いきなりこれだ。シルエットがもうおかしい。(P.06より)


サッカー選手の髪は何かと横方向に広がる傾向があるようだ。(P.42より)


ヘディングするとツルッといってしまいそうである。(P.61より)

  …と、このようになかなかストレンジなヘアスタイルが「これでもか!」と収録されているわけだが、それでも皆さん、サッカーのスーパースターとして活躍してきたのである。人間、髪の毛なんか思うようにいかなくたって、何か他に得意なことがあれば、いくらでも輝くことができるのだ。
  さあ、どうだろうか。癖っ毛で悩んでいたなんて、ちっぽけなことだったと思えるようになっただろうか。あるいは、むしろ相談者さんの傷口を広げてしまっただろうか。

次回もお楽しみに!

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