- 世の中、アベノミクスとかいってるけど給料は上がらないし、バブルのときみたいな活気もなく、景気がよくなった実感が全然ありません。それに来年からは消費税が上がるとか……。住宅ローンもたんまり残っているし、とにかく家計は火の車! そんな僕の唯一の楽しみが晩酌ですが、それさえも最近は安いノンアルコールビールに換えられてしまいました。こんな僕に救いとなる本はないでしょうか?"ハマちゃん"なお気軽サラリーマン(会社員/42歳)
アルコールに酔うのか
趣味に酔うのか
あー、ねえ、家計がキビシくてねえ、ノンアルコールビールにされちゃったのねえ……って、それはもはやお酒ですらないじゃん! 甲斐性ナシは酔うことすらやめろ、と。そういう仕打ちでしょうか? くぅー泣けますなあ……。ま、おそらく相談者さんは「発泡酒」か「第三のビール」って書きたかったのではないかと推察するけど、いろんなところにしわ寄せが来てるのは事実。ワタクシも毎晩のように酒場通いをしてるけど、飲むのは1杯320円の酎ハイ。つまみは1串80円のもつ焼きだもんね。
いっそのこと酒をやめてしまえれば、経済的な負担も減るし、身体のためにもヘルシーだし、イイコトづくめなんだけど、そう簡単にはいかない。なにより、毎日の勤労のあとのお楽しみを失いたくはないもんなあ。
さて、前田俊彦という人がおります。この方はずっと昔から"個人によるドブロク造り"を推奨してきた人なのね。といっても、ドブロクというのは酒税法の対象にあたる「お酒」だから、関係当局への許可を得ずに造るのは固く禁じられている。実際、前田氏は1985年に酒税法違反容疑で起訴されて、有名な「どぶろく裁判」という闘争を起こしている。
にもかかわらず、彼はなぜドブロクを造り続けたのか? 著書『ドブロクをつくろう』のまえがきにこんなことを書いてる。ちょっと長いけど引用しよう。
「戦時中の私の経験であるが、ある軍需工場ではたらいていた優秀な技術者が自分の仕事に疑問をもって酒びたりになり、統制がきびしくて容易には手にはいらぬ酒をもとめてほとんど精神錯乱状態になり、まさに典型的なアル中患者であった。そこで私は彼に酒を自分でつくることをすすめ、さすがは技術者である彼は小型の蒸留装置を製作して果実酒からブランデーをつくることに成功したのである。そして、まもなく彼はアルコール中毒から脱出した。これはどういうことであるかというと、彼は酒をのむことの悦楽をさらに酒をつくることの愉悦にまで拡大し、酒をのむことは拡大された愉悦の部分にすぎないことの自覚に達し、必然的に節酒にみちびかれたのである」(P1より)
酒造りを始めたら、酒を飲むより造ることのほうがおもしろくなっちゃった、という理屈はわかる。でも、勢い余って「阿片の産地であるタイ国チェンマイにはモルヒネ中毒患者がいないということにも注目すべきであろう」っていうのはさすがに極論すぎるよ!
ま、いずれにせよ、趣味を持つのはいいことですよ。お金のかからない趣味をね。ワタシの場合は趣味が古本屋めぐりで、いまは自分でも古本屋を始めたから、せどり(仕入れ)を兼ねてブックオフに行ったりしてるのね。で、仕入れのためだけなら都内近郊の大型店だけ巡回してれば済むのに、つい、まだ行ったことのない支店を訪ねてみたくなって、わざわざ地方にあるすんごく小さい支店まで出掛けていったりしてるの。
いま、日本にブックオフの支店はだいたい850店舗ぐらいあるんだけど、もう340店舗を踏破したよ。完全に目的と手段が入れ替わっていて、旅費がかかるかかる。ミイラ取りがミイラに、というか、チェンマイのモルヒネ患者、みたいな話ですよ。
『NO!! に勝つ販売術
二見道夫』
(1975年/文潮出版)
爆発的なおもしろさに
受信料を払いたい
バカバカしいと思ったのなら、まずはパラボラアンテナを引っこ抜いて、油を熱して玉子を割り入れて冷やメシぶち込んでアンテナ炒飯でも作ればいいと思う。そして以後、一切テレビは見ない。そうすれば集金人も引き下がるしかないだろう。衛星放送でも地上波でも、NHKが受信料を聴取することで運営されている以上、それを見ているなら払うのが当然なわけで、それをくぐり抜けている人の存在に「不公平だ」と感じるのは、自分もズルをする側にまわりたい、って言ってることになっちゃうよ。
とはいえ、「見てる」証拠もないのに契約させられるのは理不尽だ、という怒りはわからないでもない。受信料聴取という仕組みにはそもそも無理があるんだよね。
民放はスポンサーがつくことで放送は無料で見ることができる。インターネットも通信費を除けば基本的には無料で閲覧できるし、こちらから発信するのも無料。いまはゲームだって無料で遊べる時代だ。NHKも運営形態の変化を迫られつつあるんだと思うよ。
受信料云々は別にして、セールスがやって来たときにうまく断れず、つい押し切られてハンコを捺してしまうという人には、『NO!! に勝つ販売術』なんて本をお薦めしたい。
これはセールスをする側のために書かれた本で、サブタイトルに「断わり文句を切り返す92のコツ」なんて書いてある。つまり、セールス側のテクニックを知れば、さらにその裏をかいてうまく断われるようになるんじゃないか、というわけだ。
たとえば、第1章「NOをこわがらないコツ」の11項「客の名前を必ず口に出せ」。ここでは、玄関先での呼びかけ時に相手の名前をプラスすることで、有効商談率を15パーセントもアップできると言う。
「『○○さん』と自分の名前を呼ばれることにより、訪問販売増加時代を反映して、知らずしてキッとかまえようとする顧客心理を中和してしまうのである。防犯クサリでガッチリとガードを固めて、スキ間から外をうかがった人達が、ふーっと警戒心を解いてドアーを開いてくれたのである」(P35より)
『紅白歌合戦爆破事件
/野川 南』
(1989年/ミリオン書房)
名前を呼ばれたぐらいで警戒心を解くって、どんだけ牧歌的な時代なんだという気もするけど、とりあえずここに書いてあることがセールスする側のコツであるとするなら、その逆で迫るというのはひとつの方法だ。
「とみさわさん、集金に参りました。ここを開けてください」
「はい、おっしゃる通りわたしはとみさわさんです。あなたはどなた?」
「NHKです」
「NHKのどなた?」
「ハタケヤマです」
「えっ、中学のとき同級生だったハタケヤマヒロシくん!」
「いや、わたしはコウジと言いますが……」
「アンテナ工事はもう済んでますよ!」
とかなんとかデタラメをまくしたてて相手を煙にまくといいね。なんかこの本を読むより、サンドウィッチマンのコントでも見た方がいいような気もしてきたけど。
さて、ここで相談の内容とは特に関係なく、もう1冊おもしろい本を紹介しておこう。念を押しておくけどアイ談の内容とはこれといって関係ないんだからね。深読みはしないようにね。
その名もズバリ『紅白歌合戦爆破事件』だ。毎年年末に行なわれる国民的歌謡番組に、草加次郎(実在した連続爆弾魔)が「紅白歌合戦の舞台を爆破する」との脅迫状を送ってくる。これを阻止せんとする捜査本部と犯人グループとの攻防を描いた推理小説だ。これがえらくおもしろいんだな。番組名はもちろんのこと、放送局の名前も出場する歌手たちの名前も全部実名。吉永小百合に事情聴取する場面なんかもあったりする。
「小包だったそうですね」
「付き人が開けたら、紙に包まれた鉄製の物が入っていて、妙なので父に見てもらいました」
「それで」
「爆弾らしいと気づいて、警察に連絡したのです」
「草加次郎の名前を知っていますか」
「テレビで聞いたような」
「紅白の出場は初めてですか」
「今年で二回目です」(P31より)
このくだり、いいでしょー。
ところで、実在するものを題材にした作品は、ギリギリのところで危機が回避されたりするのが一般的だが、この小説では三波春夫が暴漢に襲われてボカスカ殴られたり、開演中の第十三回紅白歌合戦の舞台上で爆弾が炸裂したり、草加次郎は爆弾魔だけじゃなくて三億円事件の犯人だったという珍説まで出てきたりして、かなりやりたい放題だ。最終的には、あっとおどろく事件にまで物語がつながっていって、唖然とさせられる。
こんなおもしろいお話をドラマ化してくれるなら、よろこんで受信料を払うんだけどなー。
悩み事があったらどんどん聞いてください。
本は"人生の知恵と経験"が詰まった宝庫だから、
なにかしらの回答が引き出せると思います!
お悩み相談はこちらまで!→ navibura@fusansha.co.jp
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