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    2012〜15年掲載

12月のお悩み
 40歳を目前に控えている女性です。マッチングサービスに登録したり、お見合いパーティ的なイベントに足を運んだりして、婚活に力を入れていますが、なかなかいい男性に巡り合えません。マッチングサービスでは何人か紹介してもらい、実際にデートもしましたが、自分のことばかり話す人や、反対に自分からはまったく話さない人が多くて、会話も弾まず……。 それでも頑張って2、3回は会うようにしているのですが、最近は"婚活疲れ"もあって、結婚願望と、このまま独りでもいいかも? という思いの間で大きく揺れています。
(人材開発/39歳)


『上手な話し方』
 安藤静夫

(1968年/新星出版社)

自分と波長の合う人は
必ずどこかにいる!

 「自分のことばかり話す人」ってのに超思い当たる〜。ワタシもそういうタイプだったので、モテなかったなー。若い頃は自分がモテないのはハンサムではないからだと思ってたけど、それだけじゃないんだよね。男女を問わず、その人がモテない理由のほとんどはコミュニケーションの下手さにあると思う。
 とにかく自分のことばっかり話してたもんね。それはいまもそんなに変わらない(先日は自分のことだけ3時間も話すトークライブをやった)けど、人づき合いを繰り返していくうちに反面教師から学んだり、自分のダメなところを注意してもらったり、あるいは非常に話の聞き上手な友達を見習ったりして、少しずつ改善していった。

 自分自身のことは、自分で欠点に気がつければ、それを直していくことでなんとかなると思うけど、婚活で出会う相手がことごとくロクデモナイのは困りもんだねえ。出会いの場が悪いのかな。
 あと、いまは男性も女性も自由で、昔に比べると出会いの機会が多くなっているのはたしかだから、余計に平均値からズレた人が気になるっていうのはあるのかも。チャンスが増えたぶん、欠点も目立つというか。
 ひと昔前のマナーブックとかを見ると、お見合いの席ではこんな会話をせよ、という例文がいっぱい載っている。いまの感覚からすると、そうした会話はカッチンコッチンでおかしい。少し長いけどおもしろいので引用しよう。

 〈散歩について〉
啓子:まあ、素敵ですこと。わたし、自然の形が感じられるこんな小道が好きですわ……。とてもロマンチックね。夢みているよう。これが愛の小径っていうのかしら。
 あら、なんてかわいい花でしょ。この紫の花、なんていうんでしょうか。ちょっと照一さん、かいでごらんなさい。ねえ、いい匂いでしょう。あなたに誘っていただいて、ほんとうによかったわ。何もかも忘れて、頭の中がスカッとしましたの。それにしてもここ静かですわね……。ずいぶん歩いたので、道に迷ったみたい。帰りの道、大丈夫? 道々いろんな花を見ましたけど、照一さん、わたし、どんな花に似ているのかしら。お友達は秋のダリアだなんていうんですけど……。
照一:さあ、見た感じは派手で、性格がとても明るいところはダリアに似ているでしょうか。しかしダリアよりもっといいところがありますよ。あなたには匂うような感情の美しさがあるンだから。僕ならバラに似ているといいたいんですよ。あなたにはときどきトゲができるから。
啓子:まあ、ひどいわ。トゲがあるなんて。
照一:だって、おとなしそうでいて、なかなか辛辣だもの。
啓子:そうお思いでしたらさわってごらんなさい。ほうら、どこにもトゲなんか見つからないでしょう。
(P82より)

ヘンな人同士でも、波長が合っていればうまくいく、という実例でした。  

おひとり様でも
楽しく暮らせる社会を!

 しかし、なんで人は結婚しなきゃいけないんだろう。ま、いけないってことはないんだけど、社会はそういう風潮になってるよね。相談者さんは、自分の意志で結婚をしたいと思っているのか、あるいは周囲に流されてそう思い込んでいるのか──。結婚はしなきゃいけないもんだと思い込んで、好きでもない人の中から無理に相手をみつくろって、それで結婚したとしても、あんまり幸せになれるとはワタシには思えない。
 ヤンキーの皆さんって結婚するの早いじゃないですか。学生時代からどんどんくっついちゃう。そんでバンバン子ども産んじゃう。80年代の不良少年がみんな憧れた中森明菜も、若いときから結婚願望が強かったというのは、それを象徴している気がする。

「恋をしたらやっぱり、その人と結婚したいなって思う。よく"恋愛と結婚は別だ"っていう人がいるけど、私はそうは思わない」
 本当の恋を見つけた十七歳の明菜さんが自伝の中で語っていた言葉です。そして、明菜さんは幼少の頃から、彼女にとって途轍もなく大きな存在である"お母ちゃん"に、
「私は二十三歳で結婚して、二十五歳までに赤ちゃんを産むの」
と話していました。
(P174より)

 



『中森明菜
 激しさと寂しさの果ての狂気』
 木村恵子


(1995年/鹿砦社)

 でも、結局、中森明菜はいまに至るまで結婚をしていないわけで、それは結婚に向いてないというよりは、相手選びを間違えていたんではないかと思うね。結婚したい人は、相手にも「結婚したがってる人」を選ばなきゃ!
 なんで人が結婚するかというと、基本は結婚して子どもを産んで種族を繁栄させるというか、人口爆発時代のいまとなってはもうこれ以上繁栄しなくてもいいと思うんだけど、まあ滅亡しない程度には維持したい。中国なんかは人口が増えすぎたので、出産制限をしたけど、日本はまだそこまでじゃない。
 ただ、高齢化&少子化が社会の様々な場面に歪みをあらわし始めているので、そこはなんとかしなきゃならないとも思う。長い目で見たときに、人口を一定数で保てるような仕組みがあればいいなーとは思う。まずは、世の中全部が「結婚して、子宝に恵まれて、家族に囲まれて長生きする」のだけが人生の幸せのあり方だ、っていうのはもうやめたほうがいいね。そういう人生もいいけど、そうじゃない人生だって楽しくやってる人はたくさんいる。もっと選択の自由を許す社会であってほしい。
 結婚して子ども作って幸せだ〜と感じる人はそれでOK。結婚なんてしたくない子どもも欲しくない〜という人もOK。でも、結婚を強要する親戚や上司、子どもができないことを責めるような姑は死刑にしていい。ひどい暴論!








次回もお楽しみに!

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