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会社員時代に働きすぎて、躁鬱病に罹ってドロップアウト…。そうこうするうち、大企業に勤める嫁の方がたくさん稼ぐようになる始末。いま私は専門性の高い自由業でゆる〜く働き、そんなに長時間は拘束されません。だから子育てはおもに私がやっています。でも、嫁はまだ私の才能を信じているようで、「まじめに生きていない!」と責められます。友人たちが出世していくのも、正直なところ気になります。もっと頑張ればいいのかもしれませんが、死にそうになるまで働くのはもうイヤなんです!どうしたものでしょうか?
(気ままに見える自営業/40歳・男性)
『母乳 このすばらしい出発』
ラ・レーチェ・リーグ
(1988年/メディカ出版)
父親の数だけ
子育ての答えがある
まず言いたいのは「ドロップアウト」って言葉がよくないね。ドロップ=落ちる、アウト=こぼれる。文字通り「落ちこぼれた」感じがひしひしと伝わってしまうじゃないか!
そりゃ会社のために、命を削って尽くして欲しい経営者から見れば「落ちこぼれた」ってことになるんだろうけど、こっちにはこっちの人生があるからね。自分から落ちこぼれたなんて言うこたぁないよ。
相談者さんは「ゆる〜く」と言いつつも仕事はしていて、なおかつ子育てもしてるんだから、立派なものですよ。奥さんは仕事が出来る方のようだから、いっそのこと専業主夫になってしまってもいいかもしれないね。ワタシの周りにも、奥さんがバリバリ働いて、旦那さんはそのサポートに回るっていう役割り分担で生活している人たちは何人もいるよ。
生物学的には、おっぱいのある女性が子育てをするのが理にかなってるんだろうけど、それ以外の部分では父親の方が子育てに向いている、という意見もあるね。『母乳 このすばらしい出発』という本には、こんなことが書いてある。
赤ちゃんと楽しい時間を過ごすために、父親は何をしらよいのでしょうか。父親の数だけ答えがあると思います。長年の観察によると、父親はどんな小さな赤ちゃんとでも上手に遊べるようです。母親は抱いたり、お乳を飲ませたりで精いっぱいですが、父親はあごで赤ちゃんをくすぐったり、高い高いをしたり、膝の上でぴょんぴょんさせたりします。この体を使った遊びは、赤ちゃんの全体的な発育に重要です。
(P168より)
うちも娘が生まれたときに女房が病気したもんだから、けっこう大きくなるまで自宅で仕事をしてるワタシが子育てをしてましたよ。〆切りがあるときは娘を寝かせた揺り籠を机の脇に置いて、原稿書きながら片足で揺すったりしてた。そのせいかワタシによく似たヘンな子供に育っちゃったけどね。
男は本当は弱いから
いろんな武器を持っている
相談者さんは「友人たちが出世してゆくのも気になる」と書いているけど、これは奥さんがそう言ってるわけじゃなくて、相談者さん自身の気持ちなんだよね? 死にそうになるまで働くのはイヤ。だけど、友人たちが出世していくのは輝いて見える。この矛盾した気持ちが、相談者さんを苦しめてるわけだ。
だったら、どちらかを捨てるしかない。でも、死にそうになるまで働くなんてナンセンスだよ。これは古本珍生相談(通称フルチン)でワタシが一貫して言い続けていることです。命を削って働いて、出世できたとしても、それと引き換えに早死にしたらバカみたい。ならば、人の出世をうらやむという気持ちを捨てることだね。あなたはあなただ。
男はおおいに働いて、稼いで、出世して、トップを目指さなきゃならない。…なーんてのは幻想だと思うよ。男はそんなに強い生き物ではない。毒蝮三太夫が著書の中でいいこと言ってます。
男が強いと思い込ませたのは教育だ。軍国主義が、男はえらいと思わせて戦争にかり立てたんだ。男は弱いからいろいろな武器を持っている。大きい声、筋力、腕力、見栄、征服欲だとか。
ちょっと見には男は強そうだが、女にはそんなものいらない。強いから。強いから自由でいられるんだ。
男は弱いから、肩書きがいる。課長、部長、社長。だから定年で肩書きが取れちゃうと、落ち込んだりボケたりすることになる。付加価値がなくなると、ほんとに弱い。はじめから肩書きのないババアは元気なのに、男は落ち込むから死んじまうんじゃないか。
(P54〜55より)
『元気で長生き するコツ させるコツ』
毒蝮三太夫
(2003年/グラフ社)
「ババア」は余計だけど、マムちゃんいいこと言うなあ。
相談者さんは「専門性の高い自由業で」働いているそうで、それがどんな仕事かは相談の言葉だけではわからないけど、それで金銭を生み出せるだけの専門性の高い何らかの特技があるわけだ。だったら胸を張ってその道を追求すればいいんじゃないか。ただし、ほどほどにね。
奥さんからは「まじめに生きてない」と責められると言うけど、それは文面にあるとおり、あなたの才能を信じていることの裏返しだと思うんだよね。きっと奥さんはもどかしいんだよ。愛する夫がせっかくの才能を引き出せないままに歳をとっていってしまうのではないかと。でも、その焦りを取り除いてあげるのは容易ではない。
とりあえず、この本の後半に掲載されている、マムちゃんとどこかのババアとの会話を奥さんに見せてみてはどうだろう。
「こっちのおかあさんは、この放送を聞いてくれている?」
「毎日聞いてます、このラジオ楽しいから」
「旦那は何やってるの?」
「定年」
「ああそう」
「あたしが働いて食べさせている。いままで食べさせてくれたから」
「えらいねえ、旦那を大事にしてるんだ」
「そうよ、えらいでしょう」
(P102より)
で、これを読ませた結果「働け、この宿六!」ってぶっ飛ばされても、ワタクシ責任は取りません。
悩み事があったらどんどん聞いてください。
本は"人生の知恵と経験"が詰まった宝庫だから、
なにかしらの回答が引き出せると思います!
お悩み相談はこちらまで!→ navibura@fusansha.co.jp
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