- 私には婚約者がいます。相手の男性はとても優しく、真面目で、きちんとした立派な職業に就いており、私にはもったいない人だと思っています。でも、私は出会いの多い職場におり、いろんな人から食事のお誘いをいただきます。仕事半分、プライベート半分といった感じなので、お断りするのも気が引けます。
ときどきは一緒に食事をしたりお酒を飲んだりするのですが、時折そういった男性が自分の婚約者よりまぶしく見えたり、気持ちが揺らいだりしてしまいます……。実際、仕事上で出会う男性は、いろんな意味で刺激を受けたり、勉強になったりして、プラスになることも多いのです。
今後、結婚したら、そういうお誘いには応じないほうがいいのでしょうか? あるいは、社会勉強として適度にお誘いを受けてもいいのでしょうか?婚約者も仕事も"彼氏"も大事(会社員/33歳)
『写真婚の妻たち ─カナダ移民の女性史─』
真壁知子
(1983年/未來社)
写真1枚で、
異国の地へ嫁ぐ!
自由な恋愛と、そこに至らないまでも男女の交遊を謳歌している相談者さんに、『写真婚の妻たち』という本をご紹介しよう。いや、別に嫌味を言いたいわけじゃないんだ。ただ、こんな時代もあったという話でね。
明治の終わりから大正の半ばにかけて、日本では「写真婚」というのが多く行なわれた。今から90年前の日本は工業化や都市化が急激に進み、女性でも職業婦人として社会的な立場を得る可能性が開けた時代ではあったけど、田舎に生まれ育って、満足な教育も受けていない若い娘が、都会に出ていって経済的に独り立ちすることなんでまず不可能だった。
そこで、先に移民としてアメリカやカナダへ渡って働いている独身男性のところへ嫁ぐという方法がとられるようになった。結婚するといっても、今のように簡単に日本と海外を行き来できる時代ではないので、お見合いは写真だけで済まされることになる。それが「写真婚」だ。
この本では5人の女性が紹介されている。それなりに幸せな生涯を過ごせた人もいれば、そうでない人もいる。広島からカナダへ嫁いでいった石川矢須(仮名)さんも、そうでなかったひとりだ。
村の友だちの紹介で、やはり広島の人ですけど、嫁さん欲しがってるいう人の話があって、わたしがそれに飛びついたんです。相手に会わずに結婚したんですよ。そんな結婚でしたから、難儀しましたよ。
写真だけみたら立派な人でしたけど、魂がないんですよ。人間はつき合ってみにゃわからんもんですよ。仲人はいいことばかりいいよりました。小説読むのが好きで、小説本をたくさん持ってなさるいう話でしたけど、頭のないのはしょうがない。くだらん本ばかり持っていましたよ。ほんとうの出稼ぎできた人、向上心というものがない人でしたよ。(P107より)
「くだらん本ばかり持って」というところでワタシも胸がズキンとなったが、それはともかく石川さんなかなか手厳しい。
それでもカナダへ出ていくために縁談を進め、23歳のときにカナダへ渡航。現地に上陸して、どんな男性かとわくわくしていた石川さんの前に、その夫となる人はあらわれた。
そうしたら、その人、写真で見た通り恰幅はええんですよ。ところが、頭はさっぱりでねえ。悲しかったですよ。ものが喉を通りませんでした。会って直ぐに失望してしまいましたよ。これじゃ一生どうなるんじゃろうと思ったですよ。(中略)賢くない。話が全然合わない。(中略)普通の人ならわたしも我慢するんですけど、どういってもあの人は普通以下ですもの。辛かったですよ。相談する人がないんですからね。あの辛さはよう忘れんですよ。
ひぃ〜。今は本当に幸せな時代なんだなあ、と思うね。
『宝石商泣かせの 宝石の上手な買い方』
棟朝幸夫
(1980年/池田書店)
宝石を選ぶように
殿方を品定め
現在、独身のアラフォー(35〜44歳)女性が10年後に結婚している確率は1%もない、といわれているような時代だから、まだ33歳で、すでに婚約者のいる相談者さんは、おそらく精神的な余裕があるんだろうと思う。だから「仕事半分」とはいいつつも、婚約者以外の男性に誘われると、ついその誘いに乗ってしまう。
なんていけないことを! 出会いが多い職場に勤めているだけでも羨ましいのに、いろんな人から食事のお誘いをいただくだなんて! ……と、世の多くの女性は嫉妬で燃え狂うかもしれないけど、いいじゃんねえ。せっかくこういう幸福な時代に生まれたんだから、どんどんその出会いを楽しめばいいと思うよ。
あなたが確保している婚約者は、ダイヤモンドのようなもの。『宝石の上手な買い方』という本によると、ダイヤモンドは美の基準が明確にあるから、数ある宝石の中でも買いやすいんだそうだよ。有名な4C(カラット=重さ、カット=研磨状態、カラー=色、クラリティ=透明度)についても、ある程度の知識を覚えたら、片っ端から店に電話して尋ねてみればいい。
多分、相手は親切に教えてくれるでしょう。たくさん電話すればするほど、マチガイのない品物が選べるはずです。
宝石専門店が都内には百軒くらいはあります。要するに、一番グレードの上のものを一番安く買えばいいのです。
問題はあなたのほうで、そこまでドライになって宝石が買えるかどうかです。(P157より)
そう、問題はそこだ。
婚約者さんだけを見つめて、他の方からの誘いをシャットアウトするのもいいだろう。でも、それは一軒目の店で店員さんに薦められるまま出されたダイヤを即金で買うようなものだ。最終的にそのダイヤを買うのだとしても、高い買い物なんだし、ひと通り他の店も見てまわってから判断したって遅くはないよね。
『元谷芙美子の幸せ開運術!』
元谷芙美子
(2005年/IN通信社)
ああ、男と女。
どっちの懐が深いか……。
「今度買った赤坂見附の本社のことやけどなあ。あのビルの屋上に、お前の看板、ネオンサインで立てることにしたから」
東京進出が決定したときに、APAグループ代表の夫から、こう言われました。
「へえ! あそこは東京のど真ん中やし、首都高からも見える。ええ宣伝になるワ!」 わたしは本社ビルの上に燦然と輝くわたしの看板を想像しました。(P39より)
これは、女社長自身の顔を前面に出した宣伝展開で知られるAPAホテルが、東京に進出するときの夫婦の会話だ。いろんな意味で豪快すぎて声を失うが、ここからも出会いの大切さを読み取ることができる。APAホテルの元谷芙美子社長は、自らの顔を会社の看板にすることで出会いのチャンスを広げたのだ。それに、出会う前から相手は社長の顔を知っているから話も早い。
そんな芙美子社長だが、最初から出会いに奔放だったわけではない。夫との初デートのときにはこんなことを言った。
「わたしはあなたとはお付き合いできません。跡取り娘なんで親の面倒みないかんのやから。長男の方とは結婚できません。ハッピーエンドにならないのに無駄な恋愛してもしょうがないです。恋をするのは時間の無駄! お互いにそれぞれ実る恋をしたほうがいいんです」(P43より)
まあ、そりゃそうだよな、と思う。芙美子社長は交際を断わるために「次男の人で気になる人がすでにいる」と嘘までついた。ところが、この夫となる男性がすごかった。
「別にそんなに早く決めなくても。ええやない。その人とも俺とも一緒に付き合えばわかるだろうけど、この世界で俺よりいい男はいないよ」(P44より)
さあどうする、相談者さん! 夜な夜な他の男とお食事に出掛けるあなたに対して、婚約者さんはこんなことを言ってくれるだろうか。
悩み事があったらどんどん聞いてください。
本は"人生の知恵と経験"が詰まった宝庫だから、
なにかしらの回答が引き出せると思います!
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