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    2012〜15年掲載

7月のお悩み

 わたしにはお付き合いしている彼がいて、そろそろ結婚かなと考えているのですが、仕事がかなり忙しく、休みも不定期です。会社的には頑張らなきゃいけない時期なのですが、正直、仕事量を減らしていきたいなと考えていますが、そうもいかない雰囲気…。
 うまく両立できればいいのですが、器用ではないので、日々、仕事に追いまくられてしまい、彼ともすれ違い状態で焦っています。どうしたらよいでしょうか!?

(30歳一歩手前/イベント企画会社のマネージャー女性)


『魚のセックス』
 金子治司

(1980年/大陸書房)

アンコウのように
本当の夫婦を目指してみる

  むむむ、これは前々回(第23回)でいただいた「結婚と起業の間で悩むサラリーマン」氏の相談の裏返しだね。バリバリ仕事をしている女性が、結婚と仕事をいかにして両立させるか思い悩んでいる、と。

  まずお尋ねしたいんだけど、相談者さんは仕事が好きだろうか? ここでは、とりあえず「仕事が好きだ」と仮定して話を進めよう。あなたがいまやっている仕事を好きなら、それはもちろん続けるべきだね。好きな仕事を減らす必要なんてないよ。そうまでして結婚するなんてナンセンスだ。

   それで彼との結婚生活がうまくいかなくなったって、あなたのせいじゃない。好きな人が好きな仕事で頑張っている姿に不満を感じるなんて、それは男のエゴだ。そういう男は結婚というものを、自分の世話をしてもらうための手段としか考えていないね。おそらく、子供ができてもまるで育児などしない父親になるだろう。

   ところで、相談者さんの彼氏は何の仕事をしてる人なんだろう。そして、その人は仕事が好きだろうか? もし、それほど仕事に執着がない人なら、いっそのこと「主夫」になってもらうのもいいよね、それであなたが彼を食わせていく。子供を作るかどうかは結婚とはまた別の問題だけど、もし授かったなら、それはそれでいいことだ。一時的に産休することにはなるだろうけど、復職してからは夫に子育てをしてもらえばいい。

  えー『魚のセックス』という本がありまして。そこにはこんなことが書いてある。

  アンコウの世界は現代の日本と同じように女上位です。アンコウというのは奇妙な形をしています。頭はつぶれたように幅広く、口はバカでかくて下アゴが上アゴよりとび出しています。エサの小魚をとるのに都合よく出来ているのでしょうが、ノコギリ型の鋭い歯を持った顔は、まあいい顔とはいえません。
(中略)
  このアンコウの仲間のあるものは、オスがメスに寄生して生きています。ヤクザのヒモのようです。ところが、オスの方がメスよりも小さくてしなやかなのです。しかし、オスはメスに気に入られるため必死の闘いを必要とします。彼は彼女をみつけると、彼女の体にしがみついて離れません。何日も、このラブシーンが続いて、彼女が認めれば、やっと夫婦になれるわけです。

(P21〜22より)

   魚にだってできることだ。人間にできないわけがない! あなたも彼氏を養って、本当の夫婦を目指してみよう!

沙知代は言った
「何とかなるわよ」と

  さて、次はあなたが「いまの仕事を好きでない」場合について考えてみよう。ま、好きでないってのは言い過ぎかな。相談の文面に「仕事量を減らしていきたい」とか「彼ともすれ違い状態で焦っています」とあるから、仕事が嫌いなわけじゃないけど、どちらかといえば彼の方が大事なのだろうと推察してみた。

  彼と過ごす時間を優先するため、仕事に割く時間を大幅に減らしたとしよう。その結果、会社からは戦力にならないと見なされて、閑職にまわされてしまうかもしれない。でも、いいじゃないか。仕事だけがすべてじゃない。何よりも、あなたは彼との時間を選んだのだから。



『女房はドーベルマン』
 野村克也

(2002年/双葉社)


  野村克也が、南海ホークスで四番打者と正捕手と監督という3つの役割りを兼任していた頃。成績不振と前妻との離婚問題で、公私ともにフラストレーションを溜めていた。そんなノムさんを救ったのが内縁の妻、野村沙知代だった。

  「考えたって、なるようにしかならないんだから。元気出しなさいよ」
  そんな調子である。そして、彼女に言われると、確かにそんな気分になってくるから不思議だ。
何ごともマイナス思考でしか考えない私には想像もできないようなエネルギーをいつも放っていた。
  私自身、心身ともに疲れきって、愛情に飢えていたのだと思う。沙知代に心の安らぎを感じたのは間違いない。

(P74より)

   沙知代、いいこと言った! その後、ノムさんは解任されてしまうんだけど、そのときも救ってくれたのは沙知代の言葉だ。

  私は沙知代に「おそらく、もう野球界には戻れない。声もかからないだろう」と不安を口にした。  しかし、彼女からはいたって楽天的な言葉が返ってきた。 「あなた、今年が四十二歳の厄年なんだから、これも厄払いだと思えばいいじゃないの。事故にでも遭って大ケガしたとか、大病したとかってわけじゃないんだから」
(中略)
そして最後に、沙知代はポツンと言った。 「何とかなるわよ」

(P82より)

   そう、世の中だいたいなんとかなる。なんとかなるというのは、誰かがなんとかしてくれる、という意味ではないよ。仕事を選んでも、結婚を選んでも、どっちに転んでもあなた自身が自分で選んだ「いま」を肯定できれば、それが「なんとかなった」ということ。幸せってのはそういうもんだ。

次回もお楽しみに!

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