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とみさわさんのように頻繁にブックオフに行くわけではないのですが、それでも週末に近所のブックオフで過ごすのが至極のひとときです。 ところが、お値打ちな"戦利品"を持ち帰ってから、ふと嫌な予感に襲われることがあります。「そういえばこの本、以前、買ったかも……!?」。そして本棚を見ると、たしかにありました! 最悪なのは、以前、自分で売っぱらったのまで買った(買い戻した)こともあります。読書の趣味・志向が変わらないので、今後もこんなことがあるかもしれませんが、無駄買いを防ぐ方法はないでしょうか?
(34歳/「読書虫」の女)
『コレクター骨董市雑学ノート』
影山忠弘
(1998年/ダイヤモンド社)
チェックリストで
所有感を心に刻み込むこと
普通に真面目にお答えすると、「チェックリスト」を作るしかないよね。手帳でも、紙切れでも、スマホのメモでもいいから、とにかく買う本、買った本をリストにしておく。これがもう答えのすべて。
一般の人の感覚では、チェックリストを作るなんて古本マニアっぽくて、なんだか嫌だなぁと拒否反応を持たれるかもしれないけど、ダブり買いを防ぐ方法は、はっきり言ってチェックリストを作ることでしか解決できないので、あきらめてコッチへ来なさい。
ただし、チェックリストと言っても、2種類の考え方がある。これから買うべき本を羅列した「探書リスト」と、これまでに買った本を記録した「蔵書リスト」だ。このふたつはよく似ているけど、その意味するところは180度違う。
探書リストは、たとえば古本で集めている全集があったとして、その全貌をすでに把握している場合などに作る。手帖などに1巻から最終巻までの数字を書いておき、入手したものは塗りつぶす。たったこれだけのことだけど、こうしておけば、間違ってもダブり買いなどしないはずだ。
ところが、新刊書でもすでに購入しているのを忘れてまた買ってしまうことがある。購入してすぐに読んでいれば、さすがにダブって買うことはないと思うが、本好きの人は1度に何冊も買って読まずに積んでおくので、こういうことが起きるんだね。
それを防ぐために役立つのが、蔵書リスト。買った本をその場で手帳にメモしておいて、新たに本を買おうとするときには、必ずこのメモを見て確認する。そういう習慣をつけるのだ。
おわかりだろうか、探書リストは「過去に発行されたものを購入する未来のための記録」で、蔵書リストは「未来に発行されるものを購入してきた過去の記録」なのだ。
リストをつけるなんて面倒臭いことだと思うかもしれないが、このように考えてみると、なんだか楽しいことのような気がしないだろうか。
本ではないが、日本一のSP盤コレクターとして知られる岡田則夫氏のチェックリストのことが『コレクター骨董市雑学ノート』の中に出てくる。
まず、入手したレコードを家に持ち帰ってから、「音盤入手記録ノート」に記入する。このノートには、入手年月日、購入場所、レコードタイトル、レコード番号、盤の状態、値段が記入できるようになっている。この記録をつけはじめてからというもの、同じレコードを買うロスはしなくなったという。
(中略)
次は「所蔵盤リスト」。とくに力を入れているものである。所蔵している、いないにかかわらず、寄席演芸の落語・講談などのジャンル別、演者別にディスコグラフィをつくり、入手した盤にチェックする方法をとっている。このリストをつくるのは単に記録という意味だけではなく、「このレコードは自分のものにした」という所有感、達成感を味わい、さらなる収集のうえで元気づけられるともいう。
(P74〜75より)
ここで大切なのは、リストを作り、記入することで「所有感、達成感」を心に刻み込むことだ。そうすればダブり買いなどしなくなる。
ダブり買いするのも
たまにはわるくないかもよ
ぼくは自分がコレクターなので、蒐集の話になるとつい熱くなって読者を置いてけぼりにしてしまうが、ここからはダブり買いのどうでもいいエピソードを披露しよう。
古本仲間と都内の古本屋巡りをしているとき、変わった本ばかり集めているぼくに向かって友達が目の前の本棚を指差してこう言った。
「とみさわさん、これは買わないの?」
『メキシコ麻薬戦争』
ヨアン・グリロ 著、山本昭代 訳
(2014年/現代企画室)
それは下半身を欠いた障害をもつケニー少年の伝記『スケボーに乗った天使』という50万部のベストセラーだったが、ぼくは彼の質問にこう即答した。
「これは映画化されてから表紙のデザインが変わったんだよね。背表紙にも【映画化決定】って入るようになったんだ。ダブって2冊買っちゃって気がついたんだよね」
じつにどうでもいい話である。
それからもうひとつ。殺人研究家の柳下毅一郎氏と飲んでいたときのこと。彼はいま読んでいる本だといって鞄から『メキシコ麻薬戦争』(ヨアン・グリロ/現代企画室)を取り出した。メキシコの麻薬カルテル同士の抗争を綿密に取材した素晴らしくおもしろいドキュメンタリーで、この後ぼくも買って読んだ。
ま、内容についてはここでは関係ないので省略するとして、気になったのは柳下氏が手にしている本のカバーだった。真っ赤なカバーに大きな明朝体で書かれた「メキシコ麻薬戦争」の黒い文字が…持ち歩きにともなう摩擦で剥がれ落ちて、ボロボロになっていたのだ。
ぼくは本を読むときはカバーを外すのであまり影響がなかったのだけど、この本のカバーはメキシコの地図を赤で印刷してクリアコートをかけた上から、黒いインクでタイトル文字を印刷してある。だからインクの圧着が弱くて落ちやすくなっているのだ。
何が言いたいか、おわかりだろうか。
おそらく柳下氏のようにカバーをかけたままこの本を読む人は、日本中にある程度は存在するだろう。ということは、人それぞれタイトル文字が独自の剥がれ方をしたものが生み出されているはずだ。数年後、それらが古本屋に出まわったら、わざとダブり買いして集めてみたいなあ、ということなのだ。
ダブり買いもときにはおもしろい発見につながったりするから、そんなにガッカリしなくてもいいんじゃないかな。
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