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    2012〜15年掲載

3月のお悩み

 絶対に、絶対に、匿名でお願いします。私には2歳年下の夫がいるのですが、最近、パート先で知り合った男性と関係を持ってしまいました。理由はいろいろあるのですが、簡単に言えば、夫が滅多に私の相手をしてくれないからです。寂しかったんです。
 それで、どうも夫は薄々気がついているようなんです。一度だけ、夫の留守中に彼を家へ招き入れてしまったのがいけなかったのかもしれません。
 関係は…まだ続いているのですが、盗聴されるかもしれないので、家の電話では連絡できません。スマホでのメッセージのやり取りも、いまは簡単に盗み見ることができてしまうようですし、怯えながら暮らしています。私はどうしたらいいのでしょうか…。

(42歳/無垢な季節さん)

 


『悪妻だから夫はのびる』
 落合信子

(1986年/光文社)

お互いが相手のために
努力してこそ夫婦である

  どうしたらいいのでしょうか…って、そんなん知るか!

  と、簡単に切り捨ててしまっては、珍生相談をやってる意味がない。なんとか頑張ってお答えしてみるが、こりゃ手強いね。そもそも、相談者さんが浮気(不倫って言葉は問題を軽くするから使わない)をした原因は何? ご主人が夜の相手をしてくれなかったから? それはまたご自分に都合のいい理由を見つけたもんだ。

   ここで唐突に落合信子さんの本を取り出そう。信子さんといえば、日本プロ野球史上で唯一の、三冠王を三度も達成した男の妻である。彼女は1986年に『悪妻だから夫はのびる』という本を出版しているが、その中に、次のようなくだりがある。ジョー・ディマジオの妻であるマリリン・モンローが記者団の質問に「寝るときはシャネルの5番だけを身に着けている」と答えたという有名な話を受けて、信子さんはこう語っている。

   結婚してしばらくは、落合のお下がりの、しかも"6番"(落合選手の背番号)と書かれたアンダーシャツを着て寝ていたのです。
 どうしてこんなことになったのかというと結婚直後、キャンプに持って行く荷物の整理をしながら落合が私に、こう言ったのです。
「オレのアンダーシャツな、おまえならケツまできてあったかいから、これ着て寝ろ」  落合にしてみれば、アンダーシャツを着た私は、自分より年下のようにかわいらしく見えるらしいのです。
(P64より)

   モンローの「シャネルの5番」に対して、信子さんは「オチアイの6番」…って、そんな話はどうでもいいよ! 本当に引用したかったのはここじゃなくて、次の箇所だった。

   私は、落合と結婚したのが三十九歳と遅かったし、しかも九つ年上の姉さん女房です。本当は、落合のお下がりのアンダーシャツなど着ている余裕などないのです。
  そこで、私は思ったのです。
  どこの夫婦だって、することは同じ。だったら、どこかで差をつけなければいけない、と。
  デパートの婦人肌着やナイティのコーナーに行ってみると、目を見張るようなきれいな物があります。レースの手が込んだものとか。
(中略)
  一週間近い遠征から落合が帰った日、私が買ってきたばかりのネグリジェを着てみせると、
  「ど、どうしただ、おっかあ!なにかあっただか!?」
  と、落合は、一瞬後ずさりしましたが、気を取り直すとネグリジェに手を触れてみて、
  「これがネグリジェか……、フーン、ツルツルして気持ちいいんだなあ……、オオッ、これは透けて見えるでねえか! おっかあ」
  と満更でもない様子でした。
(P67〜68)

   そういうことなのである。もちろん、男だって奥さんに愛想を尽かされないように努力はすべきなのだが、女性の側も努力は必要だよね、というお話でした。

盗聴行為は、する方もされる方も、
心に傷を負う

  しかしなあ、「旦那が最近かまってくれなくて寂しいの…」っていうレベルの相談だったらいいんだけど、相談者さんはヤっちゃってるからなあ。ご主人に知れたらわりと取り返しがつかないよねえ。それで、盗聴の恐怖に怯えている、と。

  家の中に盗聴器が仕掛けられている! と言ってくる人の大半は気のせいだと思うんだけど、もし、本当にあるとしたら、ご主人が興信所のようなところにでも依頼したのだろう。しかし、逆にお尋ねするけど、実際に盗聴器があったとして、相談者さんはどうするつもりだろうか? 取り除いてしまうのか、あるいは家の外でだけ連絡を取り合うようにするのか。



『盗聴の実態』
 藤井正之

(1995年/KKベストセラーズ)

  盗聴防止コンサルタントという特殊な職業の人が書いた『盗聴の実態』という本がある。著者は、盗聴器が仕掛けられていた様々なケースを紹介した後で、最後にこうまとめている。

  この本に書いてきたように、仕掛ける側にも、仕掛けられる側にもそれなりの理由があり、問題があって、その兼ね合いのなかで「盗聴」という行為が発生する。その行為が本当に発生したものかどうかを確かめる。この「盗聴器発見」という仕事を通じて、私が痛切に感じ続けてきたことは、どんな目的や理由があろうと、仕掛ける側、仕掛けられた側ともに、心に傷を負うということだった。だから、私は人々の事情に立ち入りたくはなかった。冷たく思われるかもしれないが、自分ではない第三者が負う傷を、自分が背負うことはできないし、私自身、背負えないと思ったからである。
(P220〜221)

  著者が全部言ってくれた。ぼくも同感。相談者さんが浮気を続けるのか、きっぱり関係を絶ってご主人に謝罪するのか、ご主人と別れて浮気相手の元へ走るのか、それは好きにしたらいい。ぼくが口を挟めることじゃないもんね。











次回もお楽しみに!

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