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    2012〜15年掲載

1月のお悩み

  昨年からお姑さんと同居を始めたのですが、その人がとにかく猫好きで、現在5匹も飼っています。私も猫は嫌いじゃないし、世話はすべて自分でやってくれるので、そのこと自体はかまわないのですが、問題は、そのお姑さんが猫としか会話しないことなんです。カーテンの模様替えの相談なんかを持ちかけても、私には返事をせず、猫に向かって「ミィちゃんはどんな柄がいーの?」なんていう状態で……。バッカじゃないの!? とは口が裂けても言えないし、私はどうしたらいいんでしょうか。

(栃木のネコネコ屋/女性/29歳)

 


『インコ語レッスン帖』
 磯崎哲也

(2013年/大泉書店)

インコでさえも
感情の共有を試みる

  嫁姑問題は、かつてぼくも悩まされたもんです。血の繋がってない女二人が、ひとつ屋根の下に暮らす。もうそれだけで軍靴の足音が聞こえてくる。ましてや姑から見たら、嫁は愛する息子を奪い取った女だからね、そりゃ戦争の予感しかない。台所の使用権とかさあ、ホントめんどくさくて大変だったんだからァ!

  ま、とみさわ家の話はいいとして、問題は猫ですか。相談者さんは人間と動物ではコミュニケーションが取れないと思ってらっしゃる? そんなことはないよね。どこまでをコミュニケーションと呼ぶかにもよるけど、動物がまるでこちらの気持ちを見抜いているかのような行動を見せる例は、これまでにたくさんある。そして、会話すら試みようとする例も。

  それは、犬や猫のように人間になつきやすい動物だけでなく、わりと何考えてるかわかりにくいっぽい鳥類も、人間の言葉に反応することがあったりする。

   インコには、仲間と同じ言語を使ってコミュニケーションを図りたいという欲求があります。飼育されているインコは、パートナーである人間の言葉をまねすることで、情報と感情を共有しようとしているわけです。つまりインコから見たら、人の言葉は人が発する「さえずり」なんですね。
  それに、インコはだれもが芸人気質。いつでもうけを狙っています。人の言葉をしゃべれば、飼い主さんは必ずリアクションをしてくれますから、人の言葉をしゃべることを好むのです。

(P.28より)

  と、これは『インコ語レッスン帖』という本に出てくる一節。ああした鳥の行動は、ただ人間の言葉を反射的に繰り返しているのではなく、情報と感情を共有しようとしている、つまりコミュニケーション欲求があるというわけ。鳥でさえそうなのだから、お姑さんがネコと会話していても、何ら不思議なことはない。

  送っていただいたメールの文面だけでは、お姑さんが息子(相談者さんの旦那)とも会話をしないのか、それとも相談者さんだけを無視しているということなのか、そこまではわからないけど、何か攻撃的な態度を取られるのでなければ、とりえず大目に見ておいたらいいんじゃないだろうか。

ネコとの会話は
お姑さんのSOSなのかも

  もう少し動物の話をする。例えば犬だ。犬は一体どうやって感情表現をするか。『動物のことば入門』という本の中に、このようなことが書いてある。

   「おまえたち、どんなふうに話すんだい?」  どんな犬でも、飼い主にこう聞かれたら、きっと吠え始めるでしょう。
  吠え声は、犬が人間から学んだある種のまねことばだと主張する研究者もいます。それは一部分真実でしょうが、犬は吠え声を、そのためだけに使っているわけではありません。嬉しさを表現したり、警戒をうながすためにも使用します。また人間と、人間的な内容を"語る"ためにも吠えます。たとえば散歩しようとか、遊ぼうとか、ドアを開けてくれとか、餌をくれとかです。

(P.54より)



『動物のことば入門』
 ウルリッヒ・クレバー

(1985年/どうぶつ社)

  犬を飼った経験のある人ならよくわかることだ。そして、犬は吠えるだけでなく、他にもたくさんの感情表現でもって、他者とのコミュニケーションを試みる。

  まずは尻尾。これを振って喜びを表す。股にはさんで怯えを示す。あるいは耳で感情表現することもある。耳をやや斜め後方に傾けていれば、その犬は友好的な状態だそうだし、逆に両耳をぐっと近づけて前方に向けているときは、攻撃の準備ができているのだという。

  犬が私たちのところへ飛ぶように走って来て、舌で顔をなめようとしたら、
  「あなたは僕に何を持って来てくれたの? あなたがここに居るなんて、すばらしい!」  
と、言っているのです。飛びついても、べつに犬が無作法だというわけではありません。それはおねだりの身ぶりで、幼い犬は、その動作によって餌を両親にせびるのです。

(P.64より)

  お姑さんを犬に例えるわけじゃないけれど、あなたとの会話を避けて、猫相手に話してばかりいるというのは、お姑さんからあなたへの何かのサインだという可能性はあるね。どういう事情で同居することになったのかはわからないけど、突然、息子夫婦と同居することになって、もしかしたらお姑さんは不安で一杯なのかもしれない。

  とりあえず、お姑さんの尻尾…は無いので、耳の角度とか観察してみてはどうだろうか。あるいはぺろんと舐めてみるとか。

次回もお楽しみに!

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