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    2012〜15年掲載

2月のお悩み

   2月といえばバレンタインデー。若い頃はそれでも楽しみにしていたのですが、会社での"義理チョコ"は鬱陶しくて仕方ありません。というのも、うちの部署は私を除いて8人が女性で、彼女らは小金を出し合って1つだけ買えば済みますが、さすがに部長の私はそうもいかず、ホワイトデーには個別包装したお菓子を彼女らにお返しします。今は子どもの教育費などでなるべく余計な出費は押さえたいので、つい、「義理なら寄越すなよ!」って思ってしまいます。費用がかからない効果的なお返しはないものでしょうか?

(ケツの穴が小さい生保の部長/男性/51歳)

 


『純白、この恐ろしきもの』
 ジョン・ユドキン

(1978年/評論社)

「アラ、部長さん、糖尿なの?」
チョコレート、この恐ろしきもの

  自分以外の8人が全員女性って、赤松健の漫画か! ま、部長さんの立場としては、それを無邪気に喜んでもいられませんわなー。こういう職場におけるバレンタイン行事ってのは難しい問題だね。

  仕事と関係ないことはやめなさい! と一蹴してしまえればいいんだけど、それで部下たちの信頼を失ったら部署のチームワークもガタガタになってしまう。かといって、正直に「子どもの教育費が……」なんて言おうものなら、ただでさえ加齢臭があるうえに生活臭まで漂ってしまい、リーダーとしての沽券にかかわる。

  無難な方法としては、何らかの病気を理由にチョコレートを拒否して、バレンタインデーをうやむやにするってのがある。51歳の男性だったら、成人病のひとつやふたつ思い当たるのではないか。高血圧、糖尿、不整脈、狭心症、腰痛、老眼、若ハゲ、なんかあるでしょ?

   とにかく「甘いものは危険なんだ! おれを殺す気か!」とヤミクモに主張する。ここに、砂糖が秘める危険性について問題提起を試みた『純白、この恐ろしきもの』という本がある。この中で、著者のジョン・ユドキン氏は、このように述べている。

  私が言いたいのはこれまで示して来たさまざまの相関関係は、疾病の際に砂糖が何かの役割を果たしているかもしれないと言うことをいっそう突っ込んで研究する必要があることを示すものだということであります。  たしかに、ガン、虫歯、近視、遠視、皮膚炎および痛風、といった種々の疾患の寄せ集めです。(中略)とくにガンがそうですが、痛風、脂漏性皮膚炎、屈折異常等でも、そうした種々の病状を起こすのに、砂糖がどんな役割をしているのか調べる研究を推し進めてみる必要があると考えていただけるならば、私はそれで満足なのです。
(P.185〜186より)

  いくらなんでも砂糖を摂取したからってガンになるとは思えないが、まあそういう主張をする人もいるのだ。世の中広いからね。とにかく、部内の彼女らの目につくように、この本をさりげなく会社のデスクに置いといてみてはいかがかな。「アラ、部長さん、糖尿なの? それじゃチョコレートなんてあげたら悪いわね」ってなことになるんじゃないか。

かくなるうえは古代ローマ帝国のように、
「ルパカリアの祭」式クジ引きで!

  そもそも、なぜバレンタインデーなんてものが生まれたのか。その由来は、遠く紀元3世紀のローマ帝国にまでさかのぼる。

  当時の皇帝クラウディウス2世は、結婚して妻子を持つと兵士たちの戦闘意欲が下がるとして、婚姻を禁止した。しかし、そのことを嘆き悲しむ兵士たちを見かねたウァレンティヌス(バレンタイン)司祭は、皇帝に内緒で結婚式を行なっていたという。それを知った皇帝は怒り狂い、司祭を処刑してしまう。その日こそが2月14日だったのだ。
  では、なぜ2月14日が「女性から愛を告白してもよい日」になったのか? そのひとつの説が「ルパカリア」というもので、森永製菓がまとめた『チョコレート百科』という本に詳しく書いてある。



『チョコレート百科』
 森永製菓編

(1985年/東洋経済新報社)

  「ルパカリア」とは、古代ローマ帝国で行なわれていたジュノー女神の祭典。この祭は、毎年二月一五日に行なわれ、最大の行事となっていたのは求婚相手を決定するクジ引きだった。祭の前日、つまり二月一四日になると、娘たちは自分の名前を書いた紙をカメの中に入れておく。祭の日、若者たちはカメの中の紙をクジ引き同様引くわけである。もちろん、紙に書かれている名前の娘が、求婚相手なのだ。
(P.199より)

  このことから、2月14日は女性から愛を告白してもよい日、すなわち現在のバレンタインデーになったというわけだ。

  さて、部長さん。あなたの部署でも、このルパカリアのシステムを利用してみるというのはどうだろうか。

  バレンタインデーが終わり、ホワイトデーがやってくる。みんなからもらったチョコのお返しに、部長さんは人数分のお菓子を購入する。8人の女性陣は、個別包装されたものの中から、それぞれ好きなやつを選びとる。そして、そのひとつにだけ当たりがあるのだ。当たりを開けて出てくるのは……部長さんとの1日デート券!

  きっと、翌年からはみんなバレンタインデーを完全スルーだと思うよ。








次回もお楽しみに!

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