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ここ数年、日本はおろか世界中で、30年に一度とか50年に一度と言われる異常気象がありますよね。豪雨・竜巻・大洪水・猛暑・温暖化・大地震、etc…、いつどこで起きてもおかしくない状況です。人間は太古から自然を畏れつつ敬ってきましたが、心配性の私はあと20年もすれば、とんでもない天変地異が起こって地球が破滅するんじゃないかと、おちおちビールも飲んでられません(…って、毎日飲んでるけど)。人間と気象に関するおもしろい本はないですか?
(竹橋・気象庁近くの会社勤務OL/28歳)
『大崩壊 日本列島を襲う大異変』
異常気象研究会
(1976年/ベストブック社)
狂った気象≠フため、
上方の文化は崩壊に向かっていった
ああ、これはいい相談が来ましたなあ。ぼくが経営しているマニタ書房は「特殊古書店」と銘打って、あまり一般の書店には置かれていない本をメインに扱うのが特徴。とくに、他店にはないジャンル分けをウリにしていて、ちゃんと「自然災害」なんてコーナーもある。そこから1冊、2冊と抜き出してきた本は、まず、そのものズバリな書名の『大崩壊 日本列島を襲う大異変』!!
ビルはひび割れ、燃え広がり、首都高はへし折れ、人々は大狂乱。もう表紙からして読者を怖がらせる気満々だ。昭和の時代に出版された災害本は、災害に対する心構えを教えるとか、生き残るためのノウハウを指南するとか、そういった視点はあんまりなくて、ただひたすらに怖がらせる。心霊写真集なんかと同じホラーアイテムなんだね。
この『大崩壊』は、第1章「巨大地震が襲う」で首都圏直下型地震の怖さを訴えかけ、第2章「狂った気象」では氷河期など異常気象の怖さを煽る。第3章「陸と海の牙」は主に地殻変動の被害を語り、最後の第4章では「よみがえる火山」として、火山大国日本がいかに死の島であるかを無責任に解説する。
第2章「狂った気象」の中から、「干上がった関西」という項目が最高なので紹介しよう。この本が刊行されたのが1976年なので、70年代半ばのことだと思うが、しばらく関西地区に異常乾燥注意報が出されていたときの話。空気の乾燥によって国宝級の仏像がひび割れ、あるものは真っぷたつに裂けてしまったという。
被害にあったのは国宝だけではない。当然、農作物は育たず、酒造りにも甚大な被害が出た。梅、水仙、馬酔木といった京を彩る植物も立ち枯れてしまう始末。
松や杉、槇などの常緑樹にも枯れが目立ってきた。京都大学造園科の教授は、「あと30日無降水が続けば、関西の松と杉の50パーセントは枯れてしまうだろう」と発表した。
他の県からは、応援の給水車が続々とやってくるので飲料水には心配はないが、湿度ばかりは「わけてくれ」という具合にはいかなかった。
気象庁は、「大都市化によるここ10年の高温化・乾燥化が今回の異常事態の原因となった」と発表したが、とり返しのつくことではなかった。こうして、上方の文化は崩壊に向かっていった。
(P.77より)
「上方の文化は崩壊に向かっていった」って、言い切っちゃったよ。
人間にも危険予知能力がある!?
脈の乱れは大惨事の知らせ
そして大災害といえば、なんといっても「予知」である。とくに地震。地震予知の本はたくさんあるが、なかでも最高なのは、この『あなたにもできる 第地震予知法』だ。
動植物が備えている危険予知能力のことや、地震災害が起こったときのサバイバル方法などを微に入り細に入り解説してくれて、一見すると非常に役に立つ本のようでありながら、よくよく読んでみるとどこかおかしい。動物だけでなく、人間にも危険予知能力はあるのだと「三脈の護身法」というものを紹介しているのだが、これがどうにも不思議な代物だ。
日本には昔から“三脈の護身法”といって、二十四時間前に、自分の身体に危険のあることを知る、災難予知術があった。
それは、まず左の手を左右の下あご隅の奥歯の下にあてて動脈を見る。すると指先にズキンズキンと動脈の波動を感ずるはずである。これと同時に右手の指先で左腕の手首の親指側にある脈を見る。これもズキンズキンと脈動がある。たいていの場合は左右の手の指先に感じられる脈が一致しているものなのだが、もし、その脈が右の手先に感じたものが早かったり、あごに当てている左の手先に感じるものが遅かったりする場合には、二十四時間以内に生命について危険があるものと判断してよい。本人がその場所にずっといる予定であったら、すみやかにその場所を去らなければ危険である。
(P.30〜31より)
何を言ってるのか、と思うよね。脈がズレているので身体に危険がある、というのならまだわかる。心臓や血流に不調があるのかもしれないから。でも、「本人がその場所にずっといる予定であったら、すみやかにその場所を去らなければ危険」っていうのはなんだ。場所を移動すれば治るのだろうか。
『あなたにもできる 大地震予知法』
木越保光
(1976年/たま出版)
この著者、さらにこんなことを言って読者を迷宮に引っ張り込む。
この三脈の乱れを起こしている危険が、何であるかを知るには、まず自分一人だけの脈が乱れているときは、自分自身の災難であり、脳溢血とか、自律神経失調症などに注意する必要がある。もし他人も同一の変脈である場合は、同じ病気をしていなければ火災、あるいは地震、津波、交通事故、その他の惨事が起きると判断することができる。
(P.31より)
「その他の惨事が起きると判断することができる」…って、できねーよ!
というわけで、古本珍生相談(略してフルチン)、来月もまた皆様方からのご相談をお待ちしています。
悩み事があったらどんどん聞いてください。
本は"人生の知恵と経験"が詰まった宝庫だから、
なにかしらの回答が引き出せると思います!
お悩み相談はこちらまで!→ navibura@fusansha.co.jp
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