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大学受験、真っ最中の子を持つ男親です。先日、テレビのお笑いを見て笑い転げている息子に、酔っぱらった勢いで「受験をナメている。根性が足りない!」と文句を垂れてしまい、険悪になってしまいました。この期に及んで緊張感のない息子に喝を入れる本をご教示ください。それとも私が反省すべきなのでしょうか…。
(某区役所勤務の自称・実直な男性/52歳)
『暴走族と司法試験』
金附_之
(1998年/早稲田経営出版)
世の中ナメてても、
小さな成功体験が自信の源泉となる
うちの娘もこの春から高校3年生で、やはり進路選択が迫ってる。本人としては大学よりも美術系の専門学校へ進学することを望んでいるようだけど、いずれにしても勉強はしなければならない。ところが、週末はいつも昼頃までグーグー寝ている有様で、だから相談者さんが「受験をナメている!」と言いたくなる気持ちはよくわかる。
よくわかる…んだけど、親であるぼく自身が受験どころか、世の中そのものをナメて生きてきたような人間なので、何を言っても説得力がないんだな〜。
というわけで、そんなときのために珍本がある。何かいい受験エピソードが載ってる古本はないかな…と、店の本棚を漁って見つけ出してきた本がこれ。金附_之氏の『暴走族と司法試験』だ。
万引き、ケンカ、タバコ、停学、暴走族に入ってシンナー遊び。しまいにゃ高校を退学という絵に描いたような転落人生を送っていた著者は、定時制高校へ通うところから人生のやり直しをスタートさせる。無事に高校を出ると、京都外国語大学英米語学科へ入学し、そこから弁護士を目指して、なんと30歳で司法試験に合格してしまうのだ。
運命の分かれ目は、定時制高校時代の猛勉強にあった。劣等生だった彼が大学への進学を決意した背景には、何があったのだろうか。
自信があったのだ。その自信はどこから来るのか。それは俺にとって明白だった。およそ「勉学」に関する俺の成功体験は、中学三年のときに約半年間で偏差値を二〇アップさせたことだけだ。これが唯一の成功体験だった。偏差値が二〇アップしたというとすごそうに聞こえるが、俺の偏差値は五〇から七〇にアップしたわけではなく、あくまで三八から五八だ。低次元の競争なのだ。したがって、客観的にみれば、この成功体験が大学入試で合格することを裏づけることはできない。しかし、主観的にはこれが俺の大学受験に向けての唯一の原動力であり自信の源泉だったのだ。
(P.102より)
すごくいいことを言ってる。暴走族から司法試験に合格した珍しい経歴の人、という理由でこの本を採り上げたんだけど、そこに書かれていることは予想以上に鋭かった。そう、必要なのは大きな成功ではない。いまはまず小さな成功で十分だ。それをキッカケにして努力すれば、やがては大きな成功を呼び込むことができるだろう。
学力をカバーできるとすれば、
一芸入試を受け、けん玉で推薦入学を!
相談者さんの息子には、何か特技はないのだろうか? 純粋に学力で大学入試を突破できるならそれに越したことはないが、学力に不安がある場合は、何か別の特技を磨くことで、そこをカバーすることだってできる。
たとえば、プロのけん玉師である伊藤佑介氏の場合。ご自身の半生を振り返った著書『けん玉で生きる』によると、彼とけん玉との出会いは、小学2年のときに兄が手にしていたのを見たのが最初だったという。たちまち、けん玉の虜になった佑介少年は、来る日も来る日も研鑽を続ける。
地元にけん玉道場があるのを知るや即座に入門し、技術にいっそう磨きをかける。そして「文部大臣杯」の関東大会に出場すると、少年の部でベスト8入りを果たす。翌年は北関東大会で優勝。その後の全国大会では惜しくも2位に終わるが、翌年の全国大会では見事に優勝。なんと、けん玉日本一(少年の部)になってしまうのだ。
さすがに中学、高校にけん玉部などという部活はないのでラグビー部に入ったりするが、けん玉への情熱は冷めやらず、鍛錬を続けていく佑介少年。そうして高校1年のときに、けん玉界の最高峰とも言える「全日本けん玉道選手権大会」に初出場すると、なんと優勝してしまうのだ。こんどは本当の日本一である。
『けん玉で生きる』
伊藤佑介
(2015年/遊行社)
高校3年になると、けん玉はとりあえず横において、受験勉強に取り組まなければならない。佑介くんは「1人で勉強する方が自分には向いている」と考え、家での自習時間を増やすために大学受験に必要な科目をギリギリ減らして4単位のみ選択したという。あまり授業に出ない佑介くんを見て、クラスメイトはこう言った。
「伊藤くんはけん玉推薦で大学に入るから、授業をほとんど受けていなかったのだと思っていた─」
そんなわけあるかー! と言いたいところだが、そんなわけがあったりするらしい。
どうも、周囲のクラスの友だちには誤解されていたようでしたが、実際に、けん玉界の先輩で、一芸入試を受け大学にけん玉で推薦入学した人も確かにいました。しかし、当の私は、“けん玉で大学に入る”などということは一切考えていませんでした。
(P.83より)
結果的に、佑介くんは正面から入試を突破して第一志望の青山学院大学に合格したのだが、そうじゃない前例もあったわけだ。
さあ、お父さん。明日あたり息子さんに「けん玉」をお土産に買ってっておやりなさい。
悩み事があったらどんどん聞いてください。
本は"人生の知恵と経験"が詰まった宝庫だから、
なにかしらの回答が引き出せると思います!
お悩み相談はこちらまで!→ navibura@fusansha.co.jp
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